le petite livre rouge
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——上海と小さな赤い本をめぐる回想

今回の旅で、特に「MADE IN CHINA」の何かを買って帰りたいという欲求はなかったのだけど、どうしても手に入れたかったのはあの「小さな赤い本」=毛主席語録である。

何を隠そう中華人民共和国の赤い旗の下、僕の頭でリピートしていたのはClaude Channesの歌う「Mao Mao」。他でもないゴダールの「LA CHINOISE(中国女)」のタイトルトラックだ。
なかでも少女のか細い声で歌われる

C'est le petite livre rouge
Qui fait que tout enfin bouge

(いよいよ全てを動かし始めたのは その小さな赤い本であった)

というくだりが頭にこびりついている。
(YouTube)

好きなのはなにもその歌だけではなく、ゴダールの「赤」にこだわった「中国女」全てを、ほとんど盲目的に好きなのだ。
もちろん、その映画を初めて観たときから、一度だってちゃんと毛沢東語録を読んだことはなかったし、さらに67年に公開されたその「赤」の映画が、果たしてどれほど68年の5月のパリを予見していたのか?それさえ未だ分からないままなのであるが。

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どこに行けばその赤い本は見つかるんだろうと、旅の間、漠然と思っていたのだけど、最終日の午前中にLV社御一行様(なんともその中心はヴィトン家5代目、パトリック・ルイ・ヴィトン氏であった!)に同行して連れて行ってもらった骨董街のあちらこちらでその赤い本を見つけることが出来たのだ。中国語やロシア語だけでなく、英語から日本語まで世界各国の言葉のエディションがある。

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本来ならまとめて50冊でも100冊でも、トランクに入りきるだけの「赤い小さな本(フランス語版)」を買って、我がアトリエの白い本棚をその小さな赤い本で満たしたかったのだけれど、そもそもフランス語版を見つけるのは、容易くはなく、結局1冊だけをトランクに入れて持ち帰ることにした。
小さいながらも偉大な毛沢東思想の詰まったその赤い本を、フランス経由、あるいはヌーヴェル・ヴァーグ経由で「赤」という色だけに変換してしまうのは、本来のこの本の使用目的ではないにせよ、僕の回路では至極当然であった。

そもそもなぜ共産主義や社会主義は「赤」で象徴されるのか、それもググってwikiって調べたら、なんともその起源はフランス革命に端を発していたという事実も知ることが出来た。

ある午後、次の予定まで2時間ぽっかり時間が出来たからと、地図も持たないままの散策でさまよった挙げ句、最後に到達してしまったのは「中国労働組合書記部旧址陳列館」。もちろんその天には翻る赤い旗があったときには何らかの必然を感じてしまった。

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2010年、いまやこの「小さな赤い本」で再び世界は逆さに動きだす…とは思えないのだけれど、1968年のフランス経由でずいぶん左に偏った中国観をもった僕の本棚にはなかなかしっくり収まった。

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| photo: sk |
by cherchemidi | 2010-05-08 02:05 | monologue
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par 梶野彰一
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