クリスのトンネルの写真を見て思い出した。再びPHOENIXについてのエピソード。 「Love Like A Sunset」の抽象的な側面はスティーヴ・ライヒに影響を受けた…というのを彼らの口から聞いたときに驚いた。 というのも、幾度か書いた通りこの「Love Like A Sunset」は今回のアルバムで僕が最も好きなトラックで、奇遇にもそんな僕のiTunesには昨年の春あたりからライヒの音楽ががっしり蓄積されていたからだ。 ライヒを“再発見”したきっかけは、たしかPat Methenyのギターの心地よさを追求してたどり着いた「Electric Counterpoint」であった。 ちょうど去年の5月の新緑の頃、太陽も高い空の下、東名高速を走っているときにこの3曲を無限にループで聴いていて、どっかにぶっ飛んでいってしまいそうな快楽の中に溺れてしまった。 ただし2008年に「パット・メセニーが最高」とか「ライヒとかの現代音楽が好きで…」なんてのは“IN”ではないだろうと特に誰ともそんな話題にもならなかったのだけれど。 ちなみにその前の“再発見”はベルギーのコンテムポラリー・バレエ集団ROSASのDVD「FASE」であって、これもそう遠くない昔の話だ。ということは、僕は継続的にライヒが好きなだけかも知れない。 そんなわけで、様々なリンクをたどってはダウンロードしているうちに、この一年僕の iTunesの中にはまったく名前も知らない覚えていない現代音楽作家の抽象的な音楽がたくさんストックされてしまっていた。果てはエレクロニカやら環境音楽やら、イヤにアカデミックな香りさえただようプレイリストが出来てしまうほどである。 話を戻して、トマ曰く「ヴェルサイユからパリへ向かう車の中でライヒを聞いていたら、その単調に流れていく景色と、その音が同調するのを感じて…」とのことであったのだが、そんな話を聞いた後の5月、僕もヴェルサイユのスタジオからパリまで帰る車に同乗させてもらう機会があった。 パリ=ヴェルサイユの間を車で往復したのは決して初めてでもなかった(一度は深夜のバスも経験した)のだが、その日は時折小雨も混じるあいにくの曇り空で、ちょうど薄暗くなってくる時間であった。ヴェルサイユからパリまでは森のような道がずっと続いている退屈な道だ(この道を走っていて毎度思うのは、かつてのヴェルサイユの貴族たちは華やかな舞踏会やら夜会のためにこんな森の中の長い距離を馬車に乗って遊びに出かけていたのかということ…)。 確かに木の他に何も見るものもない単調な景色にはライヒのようなミニマルな音楽が合わないはずはないと感じたのである。 16区からパリ市内に入って、セーヌ河岸沿いにジョルジュ・ポンピドゥー道を東に走るとエッフェル塔が見える。この方向から見るエッフェル塔はどことなく新鮮だ。 5月はちょうどトマの自宅の先の角を曲がったすぐのアパルトマンに泊めてもらっていたので、サンジェルマン大通りまで一緒に車で送ってもらった。 「Love Like A Sunset」は大きな太陽を反射したセーヌの水面を思い起こさせていたのだが、ライヒのその話を聞き、その小雨まじりのヴェルサイユ=パリを走るという追体験の後には、その抽象性は雨とだって相性は悪くないと思えるようになった。そんなエピソード。 | photo: sk | (参照)スティーヴ・ライヒ、いくつかのアルバム | Steve Reich "Electric Counterpoint" | これがPAT METHENYの。 (Amazon) | Steve Reich "Music for 18 Musicians" | 言わずもがなの金字塔。 (Amazon) | Steve Reich "Early Works" | 初期作品。 (Amazon) (参照)ライヒから派生して聞いたいくつかのコンテムポラリー・ミュージック | Hans Otte "Aquarian Music" | ほぼジャケ買い。 (Amazon) | Terry Riley "Les Yeux Fermés, Lifespan" | (Amazon) (参照)雨の日の環境音楽 | Goldmund "The Malady Of Elegance" | (Amazon)
by cherchemidi
| 2009-07-21 13:58
| de la musique
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monologuephoto à la mode de la musique j'aime le cinema et cetera... Qui est vous, Shoichi Kajino?
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