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Vicky Cristina Barcelona
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ああ!この夏はバルセロナに猛烈に行きたい、なんて思わせたのは、意外にもウディ・アレンの映画のせいである。『Vicky Cristina Barcelona』、原題はなかなか素敵なのだけれど、それにつけられた邦題は『それでも恋するバルセロナ』。さて、どうなのでしょう? 
上の写真は去年の秋にパリで公開された際のポスター。
もうひとつデザイナーの視点からいうなら、このオリジナルポスターでの写真のトリミングの巧さ。それに比べて日本版はトリミングがあますぎるし、日本だけはデザインもまったく別物なのだ。映画会社のひと、見てたらごめんなさい。実は一度この映画と気づかないまま試写状をゴミ箱に入れていた…。
別で頂いたFAXで気づかされ、ゴミ箱から救出されたその試写状とともに、完成披露試写で見せて頂いたわけである。

以前にも僕がウディ・アレンの映画が苦手なことは告白したが、ここ数作『マッチ・ポイント』以降はスカーレット効果もあってか、試写だったり飛行機だったり、毎回見てしまっているような気がする。この数作はその語り口もずいぶんと軽くなってきて、最高の娯楽作…などと書くとウディ信者から叩かれそうだが、さらに今作はそんな邦題がつけられてしまうのを躊躇しないほどに、ここ最近の中でもっとも軽いタッチの作品だ。スカーレットはさておき、ペネロペの演技はさすがの助演女優賞もの。ただあの男が、コーエン兄弟の「ノーカントリー」男だったとは、見終わるまで知らなかった…。
日本のサイトで見れる予告編だけでそのストーリーの90%は分かってしまいそうなライトな(ほんとはヘヴィな関係なはずだが…)ラヴストーリーに、バルセロナの観光宣伝のような雰囲気さえある。

素晴らしいスペインの太陽! 
そして僕が最もこの映画で気になったのはそのテーマソングだ。
Giulia y Los Tellariniのその名も「Barcelona」
スペイン語での気怠いウィスパー・ヴォイスがチャーミングなボッサ・ポップ!
試写終わりの銀座のオーバカナルですでに検索済み、帰宅後すぐにiTunesで見つけてダウンロードしてしまった。
さらに気に入ってGiulia y Los Tellariniのアルバム「Eusebio」までディグってしまった(何曲かフランス語の曲もある)。

これを聴いていてすぐに思い出したのは『カラスの飼育』の挿入歌であるJeanetteの「Porqué Te Vas」。このJeanetteもカリフォルニアで生まれバルセロナへ移った女性アーティスト。このスペイン語の70年代歌謡「Porqué Te Vas」は、どういうわけだかフランス人に絶大な認知率がある曲である。『カラスの飼育』だってスペイン映画だし、まあカルト映画(Amazon高騰中(笑))といってもいい作品のはずなのになぜだろう。

あ、ウディの映画はいよいよ来週末公開! タイトル通りデートなんかにもオススメの映画ですw。

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by cherchemidi | 2009-06-14 13:02 | j'aime le cinema
RENDEZ-VOUS AVEC LA PLANETE
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| HOME |

フランス大使館のサイトからの情報。
本日6月5日は世界環境デーとのことで、フランス人写真家ヤン・アルチュス=ベルトランによる映画『HOME』が全世界で観られるそうです。
さっそく調べてみましたが日本では劇場での公開はないようで、YouTubeの小さなスクリーンで観るには物足りないスケールの大きな映像ではありますが、とりあえずあとで観てみようかと…。
フランス語だけではなく、英語版もあり。

実はこう見えて、「ブルー・プラネット」(もちろん全巻)、「プラネット・アース」(もちろん全巻)はじめ、「ワタリドリ」から「皇帝ペンギン」まで、この種の地球的/自然界系ドキュメンタリーは片っ端から観ているように思います。

決してアル・ゴアに感化されたわけではありません。
こういったドキュメンタリーには「醜い人間が出てこないのが最高」というのもまんざらウソではないのですが、まさに"Truth is more of a stranger than fiction."ということで。


さて、こんな映画をデスクトップで観て、Jamiroquaiのファースト「Emergency on Planet Earth」なんか聴いている僕は、スーパー・ヒポクリト・ネイチャリストでしょうか?
by cherchemidi | 2009-06-05 11:02 | j'aime le cinema
"MILK"
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もう公開されてずいぶん経ってしまったのだが、少し前、『MILK』を観た。

これはプレスリリースや雑誌のレヴューを読んだあとであるから全てが自分の言葉ではないのだけれど、この映画はまさに「今年、公開されるべくして公開された映画」のようであった。

主人公のハーヴェイ・ミルクというのは自らがゲイであることを公言し、そのコミュニティの代表として選挙に勝ち公職に就いた男である。当然その物語からはマイノリティが声を上げ、社会を動かすという構図が浮き上がってくるわけだが、映画の中でとにかく「We Need To CHANGE」という台詞が耳を突く。「ゲイ」や「黒人」だけではなく、アメリカにおいて(ひいてはこの世界で)すべてのマイノリティが「CHANGE」のための契機を持ち得るというメッセージがある。

パリにこの映画のポスターが貼られていた時期、試写で観せていただいた時期というのが、ちょうどオバマ氏の大統領就任の「CHANGE」のムードの余熱が続いていた時期であったので、この映画の中での「CHANGE」という言葉も敏感に響いた。
オバマの就任を待って公開されたわけでもないのだが、この時期に何か必然を感じないではいられない。そもそもこの映画はガス・ヴァン・サントが10年も前から構想を抱いていて、脚本も5年も前から手がけられていたのだというから、あまりにも素晴らしいタイミングで公開が重なったのだ。

そんな『MILK』は政治映画、伝記映画としては素晴らしいと思うが、ガス・ヴァン・サントのヒリヒリした青春像や繊細な映像美といったものをを期待していたら、その点では満足できそうにはなかった。ちょうど一年前に日本で公開になった『パラノイドパーク』は、単館系のお手本ともいえそうな、本当に美しい映像に魅了された青春映画だったと思い出す。それとは対照的に『MILK』はとてもメジャーな作品。ショーン・ペンの演技もさすがの主演男優賞ものである。

『エレファント』『ラストデイズ』しかり、そしてこの『MILK』しかり、最後に「死」という結末があることが周知の上で、そこに向かっていくストーリーというのがこの監督は好きなのは間違いなさそうだ。
そういう共通項でいえば、『エレファント』『パラノイドパーク』には隠喩的な長い廊下のシーンが象徴的に登場していて、今回もクライマックスの前に廊下のシーンがある(特に暗喩的ではないが)。

まとまらなくなってきたから、まとめると、自らゲイをカミングアウトしているヴァン・サントがこういう時期に、こういう政治家のクライマックスを描くのであるから、政治映画としてのメッセージはひしひしと伝わった。そういう意味で意義ある作品。


政治は食わず嫌いのはずの僕が、こんなことを書くのもどうだろう。
ただこの時代、おしゃれは「コンサヴァ」でも、政治での「コンサヴァ」(保守)が望ましくないのは分かる。

サルコジ帝国に陥ったフランスを横目に、日本の政界においての「変革」を見てみても、たとえ党首が変わろうが、真実味のないハリボテの劇を見ている様な気がして仕方ない。この国において、もはや「保守」だろうが「保守以外」だろうが、世襲だろうが非世襲だろうが「CHANGE」は期待できなさそうだ。
by cherchemidi | 2009-05-23 05:13 | j'aime le cinema
à la pleine lune
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満月。
この夜、南青山で開かれていたのは映画の完成披露の試写会ならぬ、完成記念の晩餐会。
フードディレクターの野村友里さんの初の監督作品「eatrip」の完成を祝う晩餐会だ。
この「eatrip」は“食”の周辺を見つめるドキュメンタリー作品で、一見やわらかいながらも、ある種の力強く大きなクエスチョンを投げかけてくる作品だ。
僕は1月の関係者試写で一度観たきりだけれど、いくつかの言葉は今もずっと頭の中に残留している。
それ以降は、こんな僕でさえ“食”にコンシャスになったのも、恥ずかしながら事実である。それまでは“味”にしかコンシャスでなかったのだ。
そして、意外にも、と言っては失礼なのだが、全編フィルムを使って撮影された“絵”がきれいなのもこの映画に吸い込まれた大きな要因だ(最近のドキュメンタリーはデジタルカメラで作ったものが多いですよね)。

そんなわけで、最初は少し意外な組み合わせのように感じたが、この映画「eatrip」のデザイン周りをお手伝いさせてもらった。

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映画の中でも語られているのだけれど、「新月から満月にかけては、栄養分が根から天に向かって上っていくから、実を収穫するのには満月の日がよろしく、逆に、満月から新月にかけては、栄養が根の方におりてくるから、根菜類を収穫するのは新月がよろしい」のだそうだ(フムフム)。
昨晩、気も満ちる満月の夜に行われた晩餐会では、監督自らの手料理であたたかくもてなされた。また映画にも登場する築地の鰹節の老舗問屋、秋山商店さんはその場で削った鰹節を振る舞ってくれる。もちろんワインもビオ。いうまでもなくすべてが美味しかった。

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正直に言うと「ロハス」とか「エコ」とかいうナチュラル系のブームは、なんだか女性に占領されたテリトリーのように感じるし、逆に妙に商業的なにおいがしてとても苦手なのであるが、もっと根本の精神的な部分では共鳴するものがないわけではない。(ほら、なんていったってボスウィック氏のスピリチュアル手料理だって口にしているし、太陽礼拝のポーズくらいは知っているからね)

この映画、「eatrip」はちょっと先になるけれど、6月頭から恵比寿のガーデンシネマほかで公開とのことなので、フライヤーなどを見かけたら気にしてみて頂ければ幸いです。


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by cherchemidi | 2009-04-10 12:44 | j'aime le cinema
Bonjour Tristesse
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「悲しみよ こんにちは」

フランソワーズ・サガンの処女作の冒頭にはエリュアールの詩が引用されている。

そして

ものうさと甘さとがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しい、立派な名をつけようか、私は迷う。 
(※朝吹登水子訳 新潮文庫)

と、こんなにも可憐な一文からはじまるのだ。小説は冒頭の第一文がすべて。
僕はこの冒頭だけを何度繰り返して読んだことだろう。
というのも南フランスのヴァカンスが舞台ということにひかれ、初夏が近づくとなんとなくこの一冊を手に取るのだが、あんなに短い小説を最後まで読み終わらないまま、夏にはベッドの下に落ちていることがしばしばであった。
こんな僕だが、この小説のことを好きな一冊に挙げるのをお許しいただきたいのである。

実は昨年末に河野万里子さんの新訳で登場(Amazon (新潮文庫))したのも最近まで知らなかったほどだ。(もちろん店頭で見つけてすぐに買って、今回もまた冒頭の何ページかだけは読んだ)


ともかく、こんな風にサガンのことを改めて考えるようになったのは、ほかでもない、彼女の生涯を描いた映画を観たからである。
2月の試写でいち早く見せて頂いていたのだけど、先週のフランス映画祭に監督とサガンの息子さんもいらっしゃるというので、はやくも2回目のスクリーンで観ることに(1ヶ月少々の間に2度もスクリーンで観る映画といったらスターウォーズ以来である)。

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映画自体の評価はこれから観る皆様の判断にお任せするとして、主演のシルヴィ・テステューがあまりにも上手に「サガン」を“コピー”しているのは驚いた(特に70〜80年代のサガンの話し方やその仕草!)。

ちなみに当時のサガン本人の映像は、YouTubeでもいいのだけど、できればフランス最大の映像アーカイヴを誇る「ina」のサイトで、「Francois Sagan」で検索してみてください。
良質の映像アーカイヴがどっさり見られますし、何ならダウンロードで買うこともできます。

伝記映画と言えばすぐに思い出したのが、2年前の「エディット・ピアフ(La Môme)」で、これは140分でふんだんに彼女の一生を描いた美しい映画だったし、マリオン・コティヤールの演技も素晴らしく世界的な大成功をおさめた。
それと比較するのも酷かもしれないが、この「サガン」は120分で「悲しみよ こんにちは」でのデビューから彼女の死までを描いていて、やはりそんな時間の制限の中で、詰め込みたいエピソードは山ほどあるものだから、ちょっと展開が駆け足すぎる感は拭えなかったのである。

ただフランス映画祭でディアーヌ・キュリス監督と、サガンの息子さんであるドニ氏を迎えた上映後のティーチインの中で、いくつかの生々しいエピソードを聞くことが出来、映画にふくらみを持って理解することが出来た気もする。

個人的なサブの見所としては、ジャンヌ・バリバール演じる、サガンの最愛の友人であったスタイリスト、ELLE誌編集長のペギー・ロッシュの80年代的スタイリングと、助演っぷり。サガンのファッションのヒョウ柄。丈の短いサブリナパンツにトレンチコート! そして見覚えのあるカジノ・ドゥ・ドゥーヴィルやトゥルヴィルの海…といったところだろうか。それから、原稿を打つタイプライターの音も今では懐かしい。

さて、またも話はまとまらなくなってきた。
フランソワーズ・サガン、彼女のきらびやかで大胆でエレガントな短い一生を、映画館のスクリーンでともに追随するのも、まったく悪くないと思うのである。Bunkamuraほかで初夏から公開とのこと。ぜひ。>公式サイトはこちら



余談…。
明らかに「エディット・ピアフ(La Môme)」の成功によって一気に企画が立ち上がったと思われるフレンチ伝記映画だが、今年はいよいよココ・シャネルが公開され、セルジュ・ゲンスブールの撮影がスタートしたという(2010年公開)。
「COCO AVANT CHANEL」はオドレィ・トトゥが主演で4月公開だ(フランス公式サイト)
さてあまりに強烈な個性の彼女、そして彼をどんな俳優が、どのように演じたらフランス人は納得するのだろうか? そんな心配をよそに、やはりファンとしては再び映画でその人生を追随したいと願うわけである。

(おまけ>ゲンスブールのキャスティング…>オ〜ララ!
by cherchemidi | 2009-03-22 21:32 | j'aime le cinema
Broken English
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| Zoe Cassavetes | photo: sk |

ゾエ・カサヴェテスが長編デビュー作『BROKEN ENGLISH』のプロモーションで来日したのは、もう2ヶ月も前になる。遅ればせながら、取材をした際の記事がhoneyee.comにてアップされました。

父、ジョン・カサヴェテスの映画は『こわれゆく女』『フェイシズ』『アメリカの影』『グロリア』など観たけれど、映画としてはっきり覚えているのは『グロリア』だけで、『こわれゆく女』と『フェイシズ』は何よりそのポスターのかっこよさで記憶している程度であったことを恥ずかしながら告白しておく。『フェイシズ』はサウンドトラック盤のジャケットも素晴らしかったからジャケ買いしていた。

ゾエ・カサヴェテスには、大きな女性、という印象がある。背格好というのではなく、言動が直接的で大胆な印象があってそう思うのかもしれない。
ジャン・トゥイトゥに「明日東京でゾエに会う」とメールしたら、「私の妹だと思って丁重に接するように…」と返事が来た。ゾエの初めての作品『MEN MAKE WOMEN CRAZY THEORY』はA.P.C.からDVDでディストリビュートされていた。

その短編から8年の沈黙は長過ぎたようにも思うが、どちらにしても、あのニューヨークのインディペンデントな雰囲気を漂わせたままの初の長編はよくもわるくも期待通りであった。個人的な印象としては、ニューヨークの映画はよくしゃべる…のである。『BROKEN ENGLISH』の場合も叙情というよりもダイアローグで足早に話が展開するというタイプの映画である。

ゾエに対して、ほとんどのメディアでの「新たなソフィア・コッポラ」的な紹介は、決して間違ってはいないけれど、正しいとも思わない。そうはいいながらも自分の取材でも当然のようにソフィアの名前を挙げてしまうわけであるが、映画そのものの描写や素材自体に多くの共通点はない。
あえて挙げるなら、その女性監督のインディヴィジュアルな面がのぞくファッションや恋愛観のようなもの。

むしろすぐに思い出したのは、この夏に観た才女ジュリー・デルピーの監督・脚本・主演作『パリ、恋人たちの2日間』という映画だ。フランス人の立場が男女逆ではあるが、ニューヨーカーとパリジャン、パリジェンヌの恋愛観の相違を描いたラヴ・ストリーとしてはどちらも興味深い。(ジュリー・デルピーは監督以上に脚本がすばらしい!)それにしても、パリジャン、パリジェンヌ…っていうのは、どんなに特異な生き物だろうか。あらためて嫌いになって、大好きになる。

ゾエはフランス人アーティストのスクラッチ・マッシヴと結婚して、パリに移った。その事実を知ってしまっていると、僕の印象ではパーカー・ポージ−演じる主人公のノラはまったくゾエにしか見えなくなってしまう。

何より彼女のセンスの良さを証明するのは『BROKEN ENGLISH』というタイトルで、全てのストーリーを言い表してしまっているところかもしれない。
by cherchemidi | 2008-12-23 16:28 | j'aime le cinema
MERDE.
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| MERDE / LEOS CARAX | photo: sk |

レオス・カラックスのポートレートを撮れる機会を得たことは非常にうれしかったので、その日は暑かったのだけど長袖の白いシャツで向かった。

だが、果たして僕は彼の新しい映画についてどう書くべきだろう。
カンヌで上映された後の記事をネットで探して読みあさっていた時点で、なんとなく予感はあった。それでも日本での完成披露試写には30分も前に着いて並んだし、最終の試写でももう一度…と思って見直したのである。

実際のところは、何も書かずにスルーしておきたくなるような作品で、これから先も僕はどこかにこの作品についての原稿を書く機会もなさそうなのだが、同席させて頂いた合同取材では、いくつか興味深い言葉があった。
それからあんなにおいしそうにタバコを吸う男を久しぶりに見た。

もしこれから観られる人がいるのなら、ドニ・ラヴァンは永遠にカラックスのオルターエゴであることを念頭におきつつ、彼が日本人について吐く言葉を聞き逃さないように。最高だ。

ブログなので、いちカラックス・ファンとして、正直に感想を書くなら、ほんとうに最低な映画なのだが、なんだか妙に壮快な短編、なのである。
最初から笑いながら観るべき映画であることを、分かっていれば、大丈夫…かもしれない。まあそれにしてもひどいオチで失笑してしまった。
カラックスを嫌いになりそうだったが、本人に会ってしまったらやっぱり嫌いになれるわけはない。
今なら、彼の言葉をふまえた上で、もう一回観てもみるのもいいと思う。

映画のタイトルは『MERDE メルド』=『糞』。
『TOKYO!』というオムニバス映画の一編である。
by cherchemidi | 2008-08-19 22:57 | j'aime le cinema
Paranoid Park
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| PARANOID PARK  ©2007 mk2 | Gus Van Sant |

毎年この時期、4月末〜5月頭は、いい映画に恵まれているように思うのは気のせいだろうか。
実はもうずいぶん前に試写で観せて頂いていたにもかかわらず、どこでも紹介する機会のないまま僕の中で悶々としていた映画がこの『パラノイドパーク』。
とりあえず僕が観た中(全部は観てないんですが…)ではガス・ヴァン・サントのベストであり、もしかしたら2008年のベストかも知れない。

これも遅ればせながらhoneyee.comに原稿を書きました。

実は『エレファント』は一回目(確か完成披露試写!)に観たときは全然“来ない”ままだった。さらに『ラストデイズ』は全然“観れない”作品だった。
ところが去年初めて日本でスクリーン公開されたデビュー作『マラノーチェ』と例の『パリ、ジュテーム』での短編を観て、ガス・ヴァン・サント熱が上がってきていたわけである。

とにかく単純なストーリーなので、ここでは内容は説明しないけれど、時間軸のゆらぎ、スローモーション、少年の美しさと少女の醜さ(リアルさ)、ハイスクールの廊下のシーン…などなど、『エレファント』を彷彿させる点は多い。なんといっても描く対象への距離感とフラットな視点、さらに最終的な判断を観る者に放り投げたままという、スクリーンと客席の距離も…。

この辺りの不思議なバランスこそが、実は数行のストーリーを深い心象作品にまで引き上げる監督の素晴らしい業なのだろう。
そして今回は、撮影のクリストファー・ドイルの絵にも感動させられた。
スーパ−8でのスケートのシーン、それから、主人公が女友達の自転車の後ろにつかまってスケートボードで走る瞬間。
まあとても象徴的な2つのシーンなのだけど、くっきり脳裏に焼き付いてしまった。

ぜひ。
by cherchemidi | 2008-05-13 19:41 | j'aime le cinema
The Darjeeling Limited
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| Wes Anderson | photo: sk |


パリのA.P.C.のアトリエにて、取材でウェス・アンダーソンに会った。ジャン・トゥイトゥと彼との会話。この模様は honeyee.comの紙雑誌、honeyee.magの次号(3/17発売)に掲載される。

ここは個人のブログなのだから、その記事とは別のことを正直に書いておこう。
僕はウェス・アンダーソンの映画の面白さを全く理解できない男であった。これまで何度となく彼の作品を観ようと試みるも、一度として眠らずに最後まで観れたことがない。タイトルバックが出る前に寝た作品だってある。
ユニークでカラフルで品の良い世界観こそが彼の作品の魅力の中心なわけであろうが、僕はどうもその随所に沸き出している趣味の良さが鼻についてしまって、その世界の中に入り込めないでいたのである。ニューヨーク的というか。なんなのでしょうか?

さて、彼の映画を一本も観ないでは取材は出来ない。『天才マックスの世界』『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』の3本のDVDとともにパリに向かう飛行機に乗り込んだ。離陸してすぐにMacBookを開いてDVD観賞というつもりであったのだが、1本目の『天才マックスの世界』からして、どうしても5分として観ていられないままに眠りに落ちてしまう。どの映画も冒頭だけは何度か観た記憶があったりもする。結局12時間弱のフライトの間、何度も何度も同じシーンに戻っては、なんとか2本の作品を見終えた。隣の席に乗り合わせた乗客はさぞ不思議に思っただろう。同じ映画の同じシーンを何度も何度も繰り返し観ている(寝ている)のだから。

結局『ライフ・アクアティック』は取材の前日の夜になっても最後まで辿り着けないまま眠りに落ちてしまい、当日の朝、早起きしてなんとか見終えたという始末。なんとも失礼な話。
このエピソードを知るパリの友人は大笑いしてこう言うのだ。「君はまずウェスに会ったらその事実を告白するべきだ。そして『どうしてあなたは、そんなに眠い映画ばかりを作るのでしょう?』と質問するがいい。ウェス・アンダーソンはとてもサンパティックでクレバーな人だろうから、素晴らしい回答で返してくれるよ」と。
確かに「ゴダールより眠い」とさえ思ったのは事実だが、さすがに本人に向かってそんな失礼な発言は出来ない。ともかく取材相手としてはめずらしく個人的な思い入れが薄い人とあって、距離を置きながらの会話が出来たように思う。何といっても新作のタイミングで彼も取材をOKしてくれたのに、僕は『ダージリン急行』を観ていないままでその席に臨んでいたのであるから…。


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| Jean Touitou x Wes Anderson |


いろいろな雑誌で書かれている通り、ウェスはここしばらくはパリで多くの時間をすごしている。彼の住むアパルトマンは、この辺りの人間なら誰でも知っている。すっかりパリの時間感覚なのか45分遅れて到着したウェスと1時間ほどの取材。ジャンとウェスはご近所の友人にして、ソフィア、ロマンのコッポラ兄妹、ウェスの映画には欠かせないジェイソン・シュワルツマン、ワリス…と共通の友人も多い。そんな話から、パリ、ニューヨーク、インド、東京…、友人、宗教、『ダージリン急行』まで、話題はころころと変わりながらも(ある人が聞けば雑談だが)、なかなか面白いお話を聞かせてくれた。

ウェス・アンダーソンはいつも微妙な色のスーツを着ていて、まあ、その辺りもすごく趣味がいいのか悪いのか、僕にとってはどうも判断できないポイントだったのだけれど、その取材の後、僕の彼に対する印象は、徐々に変わりつつあったような気がする。
冒頭で過去形で語ったことでもお分かりの通り、今となっては、ウェス・アンダーソンはなかなかチャーミングな映画監督なのである。

東京に戻って、さっそく新作『ダージリン急行』を観せて頂いた。
取材の中でも語っていたのだけれど、冒頭に流れる15分の短編はパリを舞台に描かれている。『ホテル・シュヴァリエ』。「僕にとってのフランス映画のつもり」という言葉にも納得してしまった。ナタリー・ポートマンが素晴らしい。その余韻のうちに本編が始まる。
「ああ、またあのウェスの世界が始まってしまう〜」という引き摺られるような思いとともに映画が始まる。そして僕は一度も眠りに落ちないまま、エンディングまであっという間の時間を過ごしたのである。
ここでは本編について、いろいろ野暮なことはここでは書かないようにする。
実は数人の友人からこの映画に対してあまりよくない前評判を聞いていたのだけれど、むしろ僕は初めて彼の映画を楽しんでしまったような気さえする。
悔しいけれど、今さら彼の映画を知ってしまった感じなのは事実だ。
Numéro(もちろんPARISの)も、Purple Fashionも、彼へのインタヴューを丁寧に読んでしまった。
もちろん僕はこの映画のいくつかのポイントを監督本人の口から聞いているわけであるから、どうしたってスクリーンに見入ってしまうというものだろう。
とはいえ、インドにもアメリカにもウェスにも興味がない僕のような人間が、この映画を楽しめてしまったのは、「もしかしてウェスがパリジャンになったからじゃないか」…なんていう、苦し紛れのエクスキューズを以て、天才監督への賛辞に替えたいと思う。

そんなわけで『ダージリン急行』は明日から公開。
公開の前にこのことを書いておきたかったのです。
オープニングの短編『ホテル・シュバリエ』と映画で登場するマーク・ジェイコブスの旅行鞄だけでも十分に観る価値はあると。



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| 『ダージリン急行』 | (C) Twentieth Century Fox Film Corporation |
by cherchemidi | 2008-03-07 21:25 | j'aime le cinema
Cinema Concierge
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11/15発売のBRUTUS、映画特集の綴じ込みで「映画コンシェルジュ」というコーナーがあり、著名人からのリクエストに応じて映画を選ぶという「映画コンシェルジュ」のひとりを担当させて頂きました。
いやはや錚々たる映画評論家の先生方に交じっての大役。単なるフランス映画好きの僕にはあまりに僭越なお話で、せっかくなら全部フランス映画で回答してみよう、なんて考えたりもしつつ、制約の範囲内でフツーに素で回答してしまいました。

「映画コンシェルジュ」なんていいながら、今月は全然試写会に足を運ぶこともままならず、最近見た映画といえばDVDで「ザ・カンニング」を2本だけ(笑)。(——「ザ・カンニング」をあなどるなかれ、なんと舞台はヴェルサイユとサントロペ、そして主演はダニエル・オートゥイユ!)

どっちにしても、コンシェルジュの称号はすぐに剥奪されてしまいそうです。
by cherchemidi | 2007-11-14 20:43 | j'aime le cinema



par 梶野彰一
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