The Darjeeling Limited
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| Wes Anderson | photo: sk |


パリのA.P.C.のアトリエにて、取材でウェス・アンダーソンに会った。ジャン・トゥイトゥと彼との会話。この模様は honeyee.comの紙雑誌、honeyee.magの次号(3/17発売)に掲載される。

ここは個人のブログなのだから、その記事とは別のことを正直に書いておこう。
僕はウェス・アンダーソンの映画の面白さを全く理解できない男であった。これまで何度となく彼の作品を観ようと試みるも、一度として眠らずに最後まで観れたことがない。タイトルバックが出る前に寝た作品だってある。
ユニークでカラフルで品の良い世界観こそが彼の作品の魅力の中心なわけであろうが、僕はどうもその随所に沸き出している趣味の良さが鼻についてしまって、その世界の中に入り込めないでいたのである。ニューヨーク的というか。なんなのでしょうか?

さて、彼の映画を一本も観ないでは取材は出来ない。『天才マックスの世界』『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』の3本のDVDとともにパリに向かう飛行機に乗り込んだ。離陸してすぐにMacBookを開いてDVD観賞というつもりであったのだが、1本目の『天才マックスの世界』からして、どうしても5分として観ていられないままに眠りに落ちてしまう。どの映画も冒頭だけは何度か観た記憶があったりもする。結局12時間弱のフライトの間、何度も何度も同じシーンに戻っては、なんとか2本の作品を見終えた。隣の席に乗り合わせた乗客はさぞ不思議に思っただろう。同じ映画の同じシーンを何度も何度も繰り返し観ている(寝ている)のだから。

結局『ライフ・アクアティック』は取材の前日の夜になっても最後まで辿り着けないまま眠りに落ちてしまい、当日の朝、早起きしてなんとか見終えたという始末。なんとも失礼な話。
このエピソードを知るパリの友人は大笑いしてこう言うのだ。「君はまずウェスに会ったらその事実を告白するべきだ。そして『どうしてあなたは、そんなに眠い映画ばかりを作るのでしょう?』と質問するがいい。ウェス・アンダーソンはとてもサンパティックでクレバーな人だろうから、素晴らしい回答で返してくれるよ」と。
確かに「ゴダールより眠い」とさえ思ったのは事実だが、さすがに本人に向かってそんな失礼な発言は出来ない。ともかく取材相手としてはめずらしく個人的な思い入れが薄い人とあって、距離を置きながらの会話が出来たように思う。何といっても新作のタイミングで彼も取材をOKしてくれたのに、僕は『ダージリン急行』を観ていないままでその席に臨んでいたのであるから…。


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| Jean Touitou x Wes Anderson |


いろいろな雑誌で書かれている通り、ウェスはここしばらくはパリで多くの時間をすごしている。彼の住むアパルトマンは、この辺りの人間なら誰でも知っている。すっかりパリの時間感覚なのか45分遅れて到着したウェスと1時間ほどの取材。ジャンとウェスはご近所の友人にして、ソフィア、ロマンのコッポラ兄妹、ウェスの映画には欠かせないジェイソン・シュワルツマン、ワリス…と共通の友人も多い。そんな話から、パリ、ニューヨーク、インド、東京…、友人、宗教、『ダージリン急行』まで、話題はころころと変わりながらも(ある人が聞けば雑談だが)、なかなか面白いお話を聞かせてくれた。

ウェス・アンダーソンはいつも微妙な色のスーツを着ていて、まあ、その辺りもすごく趣味がいいのか悪いのか、僕にとってはどうも判断できないポイントだったのだけれど、その取材の後、僕の彼に対する印象は、徐々に変わりつつあったような気がする。
冒頭で過去形で語ったことでもお分かりの通り、今となっては、ウェス・アンダーソンはなかなかチャーミングな映画監督なのである。

東京に戻って、さっそく新作『ダージリン急行』を観せて頂いた。
取材の中でも語っていたのだけれど、冒頭に流れる15分の短編はパリを舞台に描かれている。『ホテル・シュヴァリエ』。「僕にとってのフランス映画のつもり」という言葉にも納得してしまった。ナタリー・ポートマンが素晴らしい。その余韻のうちに本編が始まる。
「ああ、またあのウェスの世界が始まってしまう〜」という引き摺られるような思いとともに映画が始まる。そして僕は一度も眠りに落ちないまま、エンディングまであっという間の時間を過ごしたのである。
ここでは本編について、いろいろ野暮なことはここでは書かないようにする。
実は数人の友人からこの映画に対してあまりよくない前評判を聞いていたのだけれど、むしろ僕は初めて彼の映画を楽しんでしまったような気さえする。
悔しいけれど、今さら彼の映画を知ってしまった感じなのは事実だ。
Numéro(もちろんPARISの)も、Purple Fashionも、彼へのインタヴューを丁寧に読んでしまった。
もちろん僕はこの映画のいくつかのポイントを監督本人の口から聞いているわけであるから、どうしたってスクリーンに見入ってしまうというものだろう。
とはいえ、インドにもアメリカにもウェスにも興味がない僕のような人間が、この映画を楽しめてしまったのは、「もしかしてウェスがパリジャンになったからじゃないか」…なんていう、苦し紛れのエクスキューズを以て、天才監督への賛辞に替えたいと思う。

そんなわけで『ダージリン急行』は明日から公開。
公開の前にこのことを書いておきたかったのです。
オープニングの短編『ホテル・シュバリエ』と映画で登場するマーク・ジェイコブスの旅行鞄だけでも十分に観る価値はあると。



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| 『ダージリン急行』 | (C) Twentieth Century Fox Film Corporation |
by cherchemidi | 2008-03-07 21:25 | j'aime le cinema
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par 梶野彰一
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