Ennui à Taipei
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| photo: sk |

撮影の仕事で台北へ誘って頂いた。1泊2日の短い出張だったので手帳を開いてすぐに引き受けた。
そもそもかねてより世界を巡りたいと思いながらも、僕のパスポートにはヨーロッパの押印しかない。
いや、最近ではフランスにしか行かないものだから、成田で押される「出国」と「入国」のスタンプが並ぶだけの味気ないパスポートである(そもそもフランスのイミグレーションでは入国時も出国時もスタンプを押さないのである)。
もちろん日本を除けばはじめてのアジアの国への訪問である。さらに沖縄より南に緯度を下げるのははじめての経験である。

多少なりの期待とともに空港に降り立った。
湿度の多い汗の臭いの混じった空気が鼻を突く。
空港からホテルに向かったものの、チェックインさえ出来ないままさっそく撮影の仕事が始まり、気がつけば夜。そのままディナーである。
その間、自分はどこにいたのか分からないままであった。

町でやけに顔や喉がホコリっぽく感じたのは、きっと偏見ではないはずである。
結局ホテルにチェックインできたのは確か深夜の1時前だった。
翌朝の飛行機に乗るため、ロビー・コールは6時50分。
それまでにその日に撮った写真を選んでメールしておかなくてはならない。
ホテルでのほんの6時間の滞在のうち、1時間は写真のセレクト・現像に費やし、ようやく浴槽でリラックスしたかと思えば、もう眠る時間もさほどない。
少しばかりの胃のもたれを感じながらも、なぜか台北のベッドで、僕はサガンを読みはじめてしまった。
2月だというのにエアコンのスイッチを入れると選択の余地なくクーラーが効いてくる。
やけに広いベッドでは眠れず、結局6時には目を覚まして、散歩に出かけたのだけど、ガイドブックも地図もないので、ここがどこなのか、どこに向かって歩くべきかも分からないままである。
町には、マクドナルドやセヴン・イレヴンやスターバックスや…ほぼ思いつくであろうすべてのチェーン店の看板を見ることが出来るのだから、エキゾチシズムも半減してしまうというものだ。
結局朝の散歩の中で台北を感じることができたものと言えば、ビルの谷間の公園で太極拳らしき朝の体操をする中年女性の集団と、急に吠える野良犬との遭遇くらいであった。

空港に戻ってくるまで24時間にも満たない台北での時間を過ごしたのだが、驚くことに1元もお金を使わなかった。もちろんいろいろと気を配っていただいていて、ありがたいことに細かい支払いを自分でする必要がなかったというのもあるのだけれど、自らすすんで買いたいものに出会う余裕もなかったのである。
入国の際、念のため、と両替していた現金はほんの2000円分ほど(笑)だったのだけど、結局それもそのまま残ってしまっていた。565元。再度円に両替というのも癪だったので、ちょうどぴったり565元で買える烏龍茶を空港で買った。結局ポケットには1元も残らないまま帰国した。

僕のパスポートにはようやく漢字のスタンプが追加された。
台北については何も分からないまま帰ってきてしまった。
あいまいにアンニュイな数時間。
ただその数時間で「水があわない」のだけは痛感してしまった。
東京に着いて、安心した…というのは嘘ではない。
東京にこの種の安堵感を覚えたのは、もう何年ぶりだろうか。

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by cherchemidi | 2008-02-26 19:56 | photo
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par 梶野彰一
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