Rêverie de Nyakuouji - Alone in Kyoto
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| Nyakuouji | photo: sk |

それが実存していたのかどうかさえ、はっきりと分からなくなる物事があるものです。忘却の果てに…。

銀閣寺から南禅寺へと続く哲学の道の半ば、若王子神社の辺りに忽然と現れる不思議な看板。レンガに囲まれた階段を伝って竹やぶの中を降りていくと、そこには古びた洋館と、雨ざらしで無造作に並べられた数々の彫像と鳥かご…。ヴィーナスから観音様、タヌキまでが無秩序に。そしてそれらに囲まれた洋館はれっきとした喫茶店。

10年は経たない昔だと思う、確かまだ処女小説を書く前の嶽本野ばら氏がその喫茶店に触れたエッセイを目にしてしまったのをきっかけに、僕はどうしてもここに足を伸ばさざるを得ない吸引力を覚えていたのである…。そしてある午後にそこを訪れたはずだ。
季節は忘れたけれど、強烈な午後の光が印象的だった。
ただ、その後、その「若王子」はいったい実存していたのだろうか…、と、ふと頭をよぎることがあった。いや、実のところ、その店の名前も忘却の彼方だったのである。

さてその後10年たらず、京都に行く機会はあれど、南禅寺や銀閣寺に行く機会はあれど、その後、その周辺を通ることはなく、先週ふと思いついて、今一度そこを訪れてみようと思ったのである。
果たして、その奇妙な空間はすっかりそのまま実存した。
風流な哲学の道に、忽然と現れる異質な「若王子」の看板を見て、店の名前を思い出した。そしてその耳慣れない読み方も。
ただそこには「本日は休ませていただきます」という看板が虚しく掲げられており、竹やぶの底へと降りてみるも、奇妙な門は固く閉ざされ、ヴィーナスの彫像は悲しげに項垂れていた。一面にそこはかとなく漂う頽廃の香りは、当時のそれとは比べ物のない異常さ。
もう数週間は人の出入りがないのは想像に易かった。すくなくとも僕の短い観察ではそのように思えたのです…。
それよりもその奇妙な空間に刺す強めの春の午後の光が、静寂の中にも何か起きそうな恐怖感に似た感情を喚起させるので、僕はシャッターを数枚切って、足早にその階段を駆け上った。猫が一匹、茂みの奥で僕をみつめていた。

階段を駆け上がると、ところどころに梅の花が妖しく咲き誇る哲学の道。平日、人通りの少ない春の夕方。
僕が、その場所の存在を確かめようと階段を下りたのはほんの数日前だけど、もうすでにどこか白昼夢のようにあいまいな記憶になっているのである。

もしかしたら本当にその看板通りにその日、休業していただけで、週末はいつものように人でにぎわう遊歩道沿いに、ぽっかり開いたその入り口が人を寄せ付けているのかもしれない…。
京都の方、情報求む。

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by cherchemidi | 2007-03-05 12:59 | monologue
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par 梶野彰一
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