ki ko to wa

アトリエに戻っても机の上も本棚も散乱し、何から手をつけていいのか分からない状態だった。
一連の避難と帰宅による疲労というのは、やはり単なる言い訳かもしれないけれど、こんな時期なので、なんとなくいろんな仕事が停滞気味である。
パリ、ニュー・ヨーク、マルメ…まだ返事をしていないままの友人からの気遣いのメールも残っている。

三連休を合わせて計画していた、松山=広島=福岡=熊本の旅行も直前まで迷っていたけど、結局すべてフライトをキャンセルしてしまった。行こうと思っていた小さな映画館からは休館のメールが来ていた。
情報は欲しいけれど、テレヴィで繰り返される悲惨なニュースと「ぽぽぽ〜ん」のプロパガンダにもやや辟易する。
普段から積みっぱなしの本を手に取るにはいいタイミングかも知れない。

それとも文字を追いたくなったのは、月が大きくて眠れなかったせいか。
(あんなに短いのにも関わらず)ずっと読みかけだった朝吹真理子の「きことわ」を読み終えた。
日本の純文学めいたものはほとんど手に取らないけれど、彼女の可憐な様とそのヴェリー・フレンチなプロフィール(サガンの訳で知られる朝吹登水子さんを大叔母さまに持ち…など)を知ってどんな作品か興味を持っていた。
芥川賞の前のドゥ・マゴ文学賞の「流跡」から。

「きことわ」は冒頭から流麗で不思議な魅力にあふれた小説に引き込まれた。ひらがなや漢字の使い分けや、精緻なことばえらびが、まるで色を選んで水で滲ませていく水彩絵の具で描かれた絵を見ているような感覚で話が広がっていく。絵画的ではあるけれど、平面的ではなくて現実と幻想と夢と、時間軸や空間が入り交じって、あらすじや話ではないぼあっとした圧倒的空気を受け取ったような読書だった。
葉山のバスや逗子からの湘南新宿ライン、サントリーホール、Bunkamuraのドゥ・マゴ…そして極めつけにマニュエル・ゴッチングの「E2-E4」のレコード盤が出てくるなど、なにかと心をくすぐってくれた。

読書に逃避し、アトリエは片付かない。
月の明るい夜は過ぎ去って、生温い春の雨が降っている。

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| photo: sk |
by cherchemidi | 2011-03-21 12:19 | monologue
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par 梶野彰一
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