metter le pied sur les herbes de la nuit

唐突な話だけれど、忘れもしない、去年のクリスマスの日に取材で小西康陽さんにお会いした。

その日の僕の任務は取材に同行してポートレートを撮影することだったので、編集長の脇でふむふむ話を聞いていた。取材は小西さんのお薦めの書籍を何冊か紹介して頂くというものだったのだけれど、その一冊に、この安西水丸さんの「夜の草を踏む」があった。

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この本を的確に説明した後、小西さんはふと僕の方を向いてこんなことを口にしたのである。

「梶野くんにはね、将来こういうエッチな小説を書いてほしいんですよ」。
「え!?」ときょとんとする僕に追い討ちをかけるように、
「ほら、だって、梶野くん、すごくエッチじゃない?」と。

否定も肯定も出来ないまま、「いや、まあ」とあいまいな返事はしたものの、その数日後、つまり2008年末にはこの本を手にしていた。

安西水丸さんのことはかつてジャケ買い(装丁買い)した村上春樹の「中国行きのスロウ・ボート 」をきっかけに、いくつかの春樹さんとの仕事で知っていた程度である(POPYEなど若い頃見ていた雑誌でさほど意識しないまま触れていたイラストレーターくらいの認識であった)から、彼が小説を書いているのは知らなかった。

この「夜の草を踏む」は短編小説集なのだけれど、その全てに官能的な描写が含まれている。一部には完全に偏執的/変質的趣味も入っていたりして、なかなか濃厚な官能表現なはずなのに、不思議なことにすぐに乾く汗のように湿り気がない。あっけらかんとした描写は、まさに表紙のイラストのような。
僕にとって官能的な小説と言えば、マンディアルグとか、シュルレアリスムとか、即、澁澤先生の訳したような世界に直結してしまいがちだったから、なんだか不思議なジャンルの小説であったように感じた(だってそちらはとにかく湿気がたっぷりだから)。

それでさっそくエッチな僕は1月にはその頭からいくつかの短編を読んでいたのだけれど、気がついたら、その本はまたベッドの下だかアトリエのソファ脇の本の山の中だかに埋もれてしまっていた。

そんな一冊を今さら探して引っ張りだした理由は、ほかでもない。
少し前に南青山を歩いていたら、向かいから歩いてくる水丸さんご本人とすれ違うということがあったからである。
それで思い出してこの夏の終わりの朝には、朝食の前のベッドで1つか2つの短編官能小説を頂いた。
自分の遅読/寡読を自慢するわけではないが、8ヶ月かけてようやく全部のエピソードを読み終えた。(「中国行きのスロウ・ボート」だって結局半分くらいしか読みませんでしたよ)

結論なのだけれど、僕にはこんな描写まだまだ出来るわけがありません。
小西さん、もし待っていていただけるのなら、しばらく時間を下さいませ。

この水丸さんの文を読んでいて、このエッチな語り口にまず必要なのは「官能の除湿」で、それに必要なのは「アメリカ」と「年齢を重ねながらの天日干し」かもと思った次第。
それじゃあ僕にはまだまだ無理そうだけど…。
by cherchemidi | 2009-09-02 01:19 | et cetera...
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par 梶野彰一
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