"MILK"
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もう公開されてずいぶん経ってしまったのだが、少し前、『MILK』を観た。

これはプレスリリースや雑誌のレヴューを読んだあとであるから全てが自分の言葉ではないのだけれど、この映画はまさに「今年、公開されるべくして公開された映画」のようであった。

主人公のハーヴェイ・ミルクというのは自らがゲイであることを公言し、そのコミュニティの代表として選挙に勝ち公職に就いた男である。当然その物語からはマイノリティが声を上げ、社会を動かすという構図が浮き上がってくるわけだが、映画の中でとにかく「We Need To CHANGE」という台詞が耳を突く。「ゲイ」や「黒人」だけではなく、アメリカにおいて(ひいてはこの世界で)すべてのマイノリティが「CHANGE」のための契機を持ち得るというメッセージがある。

パリにこの映画のポスターが貼られていた時期、試写で観せていただいた時期というのが、ちょうどオバマ氏の大統領就任の「CHANGE」のムードの余熱が続いていた時期であったので、この映画の中での「CHANGE」という言葉も敏感に響いた。
オバマの就任を待って公開されたわけでもないのだが、この時期に何か必然を感じないではいられない。そもそもこの映画はガス・ヴァン・サントが10年も前から構想を抱いていて、脚本も5年も前から手がけられていたのだというから、あまりにも素晴らしいタイミングで公開が重なったのだ。

そんな『MILK』は政治映画、伝記映画としては素晴らしいと思うが、ガス・ヴァン・サントのヒリヒリした青春像や繊細な映像美といったものをを期待していたら、その点では満足できそうにはなかった。ちょうど一年前に日本で公開になった『パラノイドパーク』は、単館系のお手本ともいえそうな、本当に美しい映像に魅了された青春映画だったと思い出す。それとは対照的に『MILK』はとてもメジャーな作品。ショーン・ペンの演技もさすがの主演男優賞ものである。

『エレファント』『ラストデイズ』しかり、そしてこの『MILK』しかり、最後に「死」という結末があることが周知の上で、そこに向かっていくストーリーというのがこの監督は好きなのは間違いなさそうだ。
そういう共通項でいえば、『エレファント』『パラノイドパーク』には隠喩的な長い廊下のシーンが象徴的に登場していて、今回もクライマックスの前に廊下のシーンがある(特に暗喩的ではないが)。

まとまらなくなってきたから、まとめると、自らゲイをカミングアウトしているヴァン・サントがこういう時期に、こういう政治家のクライマックスを描くのであるから、政治映画としてのメッセージはひしひしと伝わった。そういう意味で意義ある作品。


政治は食わず嫌いのはずの僕が、こんなことを書くのもどうだろう。
ただこの時代、おしゃれは「コンサヴァ」でも、政治での「コンサヴァ」(保守)が望ましくないのは分かる。

サルコジ帝国に陥ったフランスを横目に、日本の政界においての「変革」を見てみても、たとえ党首が変わろうが、真実味のないハリボテの劇を見ている様な気がして仕方ない。この国において、もはや「保守」だろうが「保守以外」だろうが、世襲だろうが非世襲だろうが「CHANGE」は期待できなさそうだ。
by cherchemidi | 2009-05-23 05:13 | j'aime le cinema
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par 梶野彰一
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